「なんかいい感じ」を大切に

皆さんにとって「なんかいい感じ」な状態って、どんなときでしょうか?
「朝から晩まで働いてから家に帰ってキンキンに冷えたビールを飲むとき」「車を運転していて家から職場までの道で一度も赤信号でとまらなかったとき」「家族みんなでおいしいご飯を食べているとき」「一生懸命勉強して何かの試験に受かったとき」などなど、その人によって、そして、その瞬間瞬間によって「なんかいい感じ」は異なるし、日々変わっていくものだと思います。
私自身、歳を重ねれば重ねるほど、この「なんかいい感じ」が少なくなっているような気がします。もう少し言葉を深掘りすると、「なんかいい感じ」がすごく特別なことをしている時にしか味わえなくなってしまっていないかと考えることがあるのです。目の前に転がっていたはずの「なんかいい感じ」に気づけなくなっていく怖さとともに、わたしがこどものころに感じた「目に見える世界すべてが新鮮だった頃の気持ち」にどこか懐かしさを覚えるような感覚です。
では、そんな忘れかけている「なんかいい感じ」にたくさん出会うためには、どうすればいいのでしょうか。今、わたしが心がけていることは、「まずやってみる」ということです。それは、こどものころのよりみちに似ていて、「ちょっといつもと違う道で帰ってみる」みたいに、先行きが不透明だからこそのドキドキ感とワクワク感を大事にするということです。もちろん、すべてが「なんかいい感じ」な結果になることばかりではありませんが、そこには、なにかしらの「偶然の出会い」が生まれ、行動しなければ決して出会うことのなかった「なにか」に出会うきっかけになります。
私は今、小学1年生と5歳の娘の子育て真っ最中です。子どもたちからはたくさんの元気と笑顔をもらいますが、もちろん、日々いろいろなことが起きますので、うまくいかない瞬間も多々あります。そもそも子育てという言葉もどこか上から目線なのかもしれないと思うようになりました。今年長女が小学校へ入学しました。わたしたち大人の世界でいうと、新しい会社に就職したみたみたいなものです。スクールバスに乗る、ランドセルを背負っていく、教科書を使って勉強する、決められた時間割で過ごすなどなど、環境が大きく変わる中、毎日楽しそうに通っている姿を見た時、純粋に「すごいな」と思いました。「子どもだからとか大人だからとかは関係ない」と実感をもてる出来事だったなと思います。我が家の中では、なるべく「人として」接することを意識しながら、たくさんの選択肢の中から、子ども自身が考え、選択し、行動するという自己決定の場をたくさん用意することは大事にするようになりました。(それはそれで、よいこともあれば、外食は常にラーメンかお寿司になるという弊害もありますが。笑)
スマートフォンの普及によって、なんでも自分の手のひらで完結できる世界が当たり前の世の中です。もちろん、スマートフォンやパソコンを介した出会いもありますが、どうしても自分が興味のあるものだけを情報として取り入れるため、案外視野が狭くなることもあるのではないでしょうか。人だけではなくものや時間、景色やにおいなど、五感で感じる出会いのなかで、「これはちょっと興味ないけど、こっちは興味あるかも」「これは苦手だけど、これなら夢中になれそうな気がする」という自分なりの好きのグラデーションを持つことができます。人やものなど、様々なものを掛け合わせて生まれる偶然の出会いの中にこそ、あなたがまだ気づけていない「なんかいい感じ」があるかもしれませんよ。(文:斉藤烈 イラスト:渋谷 薫)


お話してくれた人
斉藤烈さん
1988年北海道浜中町出身。現在は厚真けん玉クラブに所属しながら、全国各地で「人とのつながり」に関する講演やワークショップ等を実施。小学1年生と5歳の娘と楽しい日々を過ごしています。

絵をかいた人
渋谷 薫さん
イラストレーター・グラフィックデザイナー
東京都在住 多摩美術大学卒業 イラストレーション青山塾修了
絵をかいているとき とても楽しい
私のかいた絵をみた人が 楽しい気持ちになってくれたら 楽しいがふえて とてもしあわせ そんな絵をかきつづけたい
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