“人形劇場”があるまち札幌で豊かな育ちを
豊かなこども文化が息づくまち「さっぽろ」
「さっぽろ」というイメージを、皆さんはどうお持ちですか?
私は子どもたちと人形劇を通して関わり、かれこれ40年近くになりました。学生時代に何気ない気持ちで始めた人形劇が、自分の生涯の仕事となり、いつしか子どもたちとの創造活動がライフワークとなっていました。私が子どもたちと人形劇を続けてこられたのは「さっぽろ」という街のおかげだと思っています。この自然豊かな環境やおおらかな人柄、新しことにも果敢にチャレンジする開拓心が、札幌のこども文化を創りあげてきたのではないかと思っています。
戦後間もない1949年、札幌市に児童会館第一号の中島児童会館が誕生しました。公立としても全国初となる児童会館です。食糧難や生活物資の不足など困難な時期において、子どもたちの心を豊かにするための文化施設が誕生したことは非常に画期的なことでありました。その後、市内には児童会館が次々と建設され、次に学校の空き教室を利用したミニ児童会館も開設され、今や199館の児童会館があります。また、札幌には、全国でも類を見ない2つの子どものための専門劇場「こぐま座」と「やまびこ座」があります。こぐま座は中島児童会館に併設され、全国初の人形劇専門劇場として誕生し、全国の方々をあっ!と驚かせました。このように札幌は、子どもたちのために汗をかいた先人たちが身近に多く存在し、その想いが次の世代への豊かな「場」を創りあげていったといえるのです。
人形劇~生の舞台でしか味わえない心の通い
「こぐま座」「やまびこ座」では、毎週必ず人形劇、児童劇などを上演しています。これは、全国的に観ても札幌だけです。演じる側と観る側が心を通い合わせ一つの舞台を創りあげることが生の舞台の醍醐味です。役者たちは、観客の雰囲気やそこに流れる空気感を感じ、生の声や反応を受け止めながら演技をします。そして観ている子どもたちは、登場する人形(役者)の声や表情、動き、そして息遣いを感じながら、想像や空想というファンタジーの世界を人形と一緒に冒険するのです。そして、お母さんやお父さんなど家族の人と一緒に同じ世界を共感できることも人形劇の楽しさでもあります。
人形劇には想像力を培う力があります。想像力は相手を理解し、思いやる優しさです。だからこそ人形劇などの生の舞台を子どものころからたくさん触れてほしいと願ってやみません。この素敵な文化が「さっぽろ」にはあるのです。(文:矢吹英孝 撮影:若松和正)
お話してくれた人
矢吹 英孝
福島県出身。公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会(SYAA)。やまびこ座・こぐま座芸術監督(前館長)。さっぽろ人形浄瑠璃あしり座代表・人形劇団野良犬Plus⊕代表。国際人形劇連盟日本ウニマ副会長。2024年度北海道文化奨励賞受賞。
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